届いた注文の文章を見ながら、表に1件ずつ打ち込む。毎週、同じ画面から数字を書き出して、同じ表に写す。毎日のことなので、慣れて速くはなった。けれど、一日の終わりには、その時間がそっくり消えている。
関数やショートカットを調べる前に、もう1つ手前の問いがあります。「この入力は、そもそも人が打たなくてよいのではないか」という問いです。この記事は、いま回っている1つの業務を、Excelやスプレッドシートのまま軽くするために、どの順番で手をつけるとよいかについて書いた記事です。表を作り直す話ではなく、いまの表を活かす話です。
目次
- 速く打つ前に、打たなくて済む入力を探す
- 消せる入力は、3つの型で探せます
- 型1. 外から届くものを、見ながら打っている
- 型2. 定期的にもらう数字を、表に写している
- 型3. 別々の表を、書き写している
- 取り込みを足すときの順番
- 1. 届くものの実物を確かめて、取り込みに置き換える
- 2. しばらく手作業と並べて、合ってから手作業を止める
- 3. 知らないものが来たら、止まるように作る
- どこまでExcelで続けるか、先に決めておく
- よくある質問
- まとめ
速く打つ前に、打たなくて済む入力を探す
ショートカットや関数を覚えると、一人の操作は速くなります。ただ、業務の手間を決めているのは、操作の速さよりも、「人が打つ」「人が写す」「人が思い出して書く」回数です。同じ入力を、速く10回打つより、打たなくて済む形にして0回にするほうが、手間は大きく減ります。
関数やショートカットを否定する話ではありません。覚えておいて損はなく、残った入力を速く打つときには役に立ちます。この記事が書くのは、「それより先に手をつけると効くこと」です。
まず、いま回っている業務を1つ選びます。業務全体を書き出す方法は業務棚卸しの記事にまとめているので、ここでは、毎日か毎週、決まった手順で回っている1つの業務に絞ります。その業務について、次のことを書き出します。
- 何を、どこから見て、表のどこに打っているか。
- それを、1日に(1週間に)何回やっているか。
- 打ち間違えたり、打ち忘れたりしたことがあるか。
これだけで、「見ながら打っているだけの入力」が、どれだけあるかが分かります。そこが、消せる入力の候補です。
消せる入力は、3つの型で探せます
消せる入力は、次の3つの型に分けると探しやすくなります。
- 外から届くものを、見ながら打っている。メールやメッセージで届く注文や依頼の文章を、表に打ち直している。
- 定期的にもらう数字を、表に写している。決まった画面から数字を書き出して、表に貼り付けている。
- 別々の表を、書き写している。同じ内容が別の表や紙にもあり、見比べながら写している。
どの型も、「人が見て、人が打つ」という作業です。見る場所と打つ場所が決まっているなら、そこに仕組みを置けます。
型1. 外から届くものを、見ながら打っている
届いた文章を見ながら、表に1件ずつ打つ作業は、取り込みに置き換えられます。文章が決まった形で届くなら、品名、数量、日付といった項目を、決まった位置から読み取って、表の決まった列に入れます。
人がやることは、届いたものをコピーして、表の取り込みの場所に貼って、確かめることが中心になります。打つ作業が、確認する作業に変わります。
私たちが関わったある案件では、届いた注文の文章を見ながら、担当者が注文の表へ1件ずつ手で打ち込んでいました。表はそのまま使い、届いた文章を表へ取り込む仕組みを足しました。
型2. 定期的にもらう数字を、表に写している
毎週、同じ画面から同じ数字を書き出して、表に写している作業も、消せる入力です。数字をもらう元が、決まった形で出してくれるなら、表のほうから取りに行く形にできます。
ここで大事なのは、「同じ画面から、同じ項目を、同じ間隔で」もらっているかどうかです。毎回違う形になるものは、取り込みに向きません。まず、形がそろっているものから置き換えます。
私たちが関わったある案件では、決まった日に、画面から数字を書き出して、手で表に写していました。これを、毎朝、自動で表に入る形にしました。動かし始めのうちは、手で取った値と並べて、一致することを確かめました。つまずいたのは、取り込みそのものではなく、日付の比べ方でした。同じ日の記録が、二重に入ることがあったのです。画面に見えている日付の文字で比べる形にして、直しました。
型3. 別々の表を、書き写している
同じ内容が別々の表や紙にあり、見比べながら写している作業は、入力元を1つに決めるところから始まります。どの表を元にして、どの表がそれを見るのか。この決め方は、二重入力の記事に書いています。
入力元を1つにすると、そこ以外の入力は、元の表から出す形に変わります。打つ回数が、そのぶん減ります。
別々のExcelや紙にあった手配や発注の情報を、スプレッドシート1か所にまとめて、毎日の書き写しをなくした事例は、事例ページにあります。
取り込みを足すときの順番
消せる入力が見つかったら、取り込みを足します。ただ、足してすぐに手作業を止めると、止めたあとで食い違いに気づくことになります。順番は、次の3つです。
- 届くものの実物を確かめて、取り込みに置き換える。
- しばらく手作業と並べて、合ってから手作業を止める。
- 知らないものが来たら、止まるように作る。
1. 届くものの実物を確かめて、取り込みに置き換える
最初にやるのは、取り込む元の実物を確かめることです。届く文章や数字が、どこで、どんな形で作られているのかを、実際に何件か見ます。見た目は同じでも、中身の並び方や言い方が、思っていたものと違うことがあるからです。
次に、言い方の違いを一覧にします。同じ品物でも、届く側の呼び方と、表のなかの呼び方が違うことがあります。その対応を、表のなかの別のシートに一覧として持っておくと、取り込むときに自動で言い換えられます。
そのうえで、取り込みの仕組みを足します。表そのものは、いままで使っているものをそのまま使います。取り込むための場所を足すだけです。
先の注文の取り込みでも、足す前に、届く文章がどこで、どんな形で作られているかを、実物で確かめました。注文のサイトで使われる品名と、表のなかの品名は、言い方が違っていました。その対応を、表のなかのシートとして作りました。
2. しばらく手作業と並べて、合ってから手作業を止める
取り込みを足したあとも、すぐには手作業を止めません。しばらくは、手で打つ従来の方法と、取り込みの方法の両方で、同じものを入れます。そして、結果が同じになっているかを見比べます。
差が出たときは、どちらが間違っているかを調べます。取り込みの側の読み違いなら、直します。手作業の側の打ち間違いが見つかることもあります。
手作業を止める基準は、あらかじめ決めておきます。たとえば、「差が出ない日が続いたら止める」と決めておくと、止めるかどうかを、その場の気分で決めずに済みます。
注文の取り込みは、新旧を並べて動かして確かめてから、手入力を止めました。
3. 知らないものが来たら、止まるように作る
取り込みは、いままで見たことのある形のものを、読み取る仕組みです。見たことのない形のものが来たとき、そのまま読み取って表に入れてしまうと、間違った値が、気づかないうちに混ざります。
これを防ぐには、知らない項目名や、いつもと違う形のものが来たときに、取り込まずに止まって、人に知らせる作りにします。止まったときは、人が見て、対応表に足すか、手で直します。この作りは、手作業を止める前に、取り込みと一緒に入れておきます。
止まる作りは、手間が増えるように見えます。ただ、間違ったまま入るより、止まったほうが、直す場所がすぐ分かります。
注文の取り込みでも、動かし始めてから、知らない項目名が届いたことがありました。取り込みは止まり、項目を足して対応しました。
どこまでExcelで続けるか、先に決めておく
取り込みを足して、手作業が減ったあとでも、いつかは「このまま続けるか、作り直すか」を考える日が来ます。その日に、気分や、これまでにかけた金額で決めないために、目安を先に決めておきます。
目安にできるのは、たとえば次のようなものです。
- 業務の量。扱う件数が増えて、いまの表で回りきらなくなっていないか。
- 触る人の数。担当者が増えたときに、入力の間違いや食い違いが増えていないか。
- 不具合の頻度。取り込みや集計の不具合が、どのくらいの間隔で起きているか。
- 取り込めない形のもの。止まって人が直す件数が、増えていないか。
- 大きな直しが、落ち着いたか。表の作りを大きく変える直しが続いているうちは、作り直しても、すぐにまた直すことになります。
それぞれに、「ここまでは今の表で続ける」「ここを超えたら作り直しを検討する」という線を、数字で引きます。数字は、その会社の業務の量に合わせて決めます。
私たちが関わったある案件では、作り直しの相談を受けたとき、取り込みが入れば、いまの表で十分に回ることをお伝えし、先に手入力をなくすことをご提案しました。そのうえで、作り直しを考える条件を、先にお示ししました。条件は、業務の量、触る人が増えたときの事故、不具合の頻度、取り込めない形のものの増え方、大きな直しが必要なくなってきたかどうか、です。
これまでにかけた金額は、目安に入れません。かけた金額は、これから先の手間を教えてくれないからです。作り直すかどうかは、これから先の手間と、作り直しにかかる手間を比べて決めます。
比べるときは、「何もしない」を、1つの選択肢として並べます。何もしなかったときの手間と、手を入れたときの手間を、同じ物差しで並べると、手を入れる意味があるかどうかが見えてきます。
作り直したほうがよい場合も、あります。表の作りが、いまの業務に合わなくなり、直す手間が、作り直す手間に近づいたときです。そのときに備えて、先に線を引いておきます。中身の分からない引き継いだ表について、作り直すか直すかを決めるときの確かめ方は、別の記事に書いています。
よくある質問
Q1. 関数やショートカットは、覚えなくてよいのですか。
覚えて損はありません。関数もショートカットも、残った入力を速く正確に打つときに役立ちます。ただ、順番としては、入力そのものを消せないかを、先に考えます。消せる入力は、速く打つ必要がなくなるからです。
Q2. Excelと、Googleスプレッドシートでは、順番は違いますか。
順番は同じです。違うのは、取り込みや自動の処理を担う部分です。Excelでは取り込みの機能(Power Query)やマクロ(VBA)、GoogleスプレッドシートではGAS(Googleスプレッドシートの自動処理)が、その役目を担います。どちらでも、「実物を確かめる、並べて確かめる、知らないものが来たら止まる」の順番は変わりません。
Q3. どの業務から手をつければよいですか。
毎日か毎週、決まった手順で、外から届くものを見ながら打っている業務からです。1つの業務に絞って、「何を、どこから見て、表のどこに打っているか」を書き出すと、消せる入力が見つかります。
Q4. 外部に頼むのは、どの段階がよいですか。
消せる入力の候補が見つかったあと、または、見つけられないときです。DX Factoryの無料相談(30分)では、次に手をつける1つを、その場でお伝えします。
まとめ
Excelやスプレッドシートのまま業務を軽くするには、速く打つ工夫より先に、打たなくて済む入力を消します。外から届くものを見ながら打っている、定期的にもらう数字を写している、別々の表を書き写している、という3つの型で、消せる入力を探します。
消せる入力が見つかったら、届くものの実物を確かめて取り込みに置き換え、しばらく手作業と並べて確かめ、合ってから手作業を止めます。知らないものが来たときは、止まるように作ります。そして、どこまでExcelで続けるかの線を、先に引いておきます。
この記事で紹介した順番は、私たちが実際の案件で、手で打っていた作業を取り込みに置き換えたときの進め方です。
いまの業務のどこから手をつければよいか迷ったら、無料相談で、いまの状況をお聞かせください。次に手をつける1つを、その場でお伝えします。
DX FactoryのDX支援については、DX支援のページでご紹介しています。